正調能登舟漕ぎ唄(七尾市)

 

1 谷のヤーレ鶯(うぐいす) ハー気ままに鳴いて

  ハーおらの心をヤヨー サイカー惑(まど)わせる

2 佐渡がヤーレー島にも ハー吉原ござる

  ハー輪島お客がヤヨー サイカ駕籠(かご)で来る

3 舟はヤーレーまともに ハー帆は真ん中に

  ハーいとし殿まはヤーヨー サイカ矢帆(やほ)の影に

  押せやヤレ押せ押せ ハー船頭さんもかこも

  押せば港がヤーヨー サイカ近くなる

5 良い子のヤレ良い子さ ハー良い子の守(もり)よ

  抱(うだ)きたいわのヤヨ サイカ守(もり)ともに
  
6 沖のヤレ最中(さなか)に ハーはや緒が切れる

  帯をはや緒にヤヨ サイカ佐渡へまで

7 いとしヤレとのまは ハーやぐらの番や
  
  落ちて死ぬなやヤヨ サイカやぐらから

8 いとしヤレとのまの ハー櫓(ろ)を押す姿 
  
  早稲の出顔でヤヨ サイカようようと

9 島田ヤレまげ結(ゆ)うて ハー足投げて出して

  親と居(お)るようなヤヨ サイカわけはない 
 
10 あい(東北からの風)のヤレ 朝凪(あさなぎ) ハーくだり(南西の風)の夜凪(よなぎ)
 
  魔風(まかぜ) 東風(たばかち・北西)ヤヨ  サイカ昼に凪(な)ぐ

11 からすヤレ 羽(ばね)ほどヤヨ ハー染めこうだ仲を

  ハー離せ 離れはヤヨ サイカ親の無理

12 舟はヤレ 新造(しんぞう)でも ハー櫓(ろ)は新櫓(あらう)でも

  ハー押さにゃ その舟ヤヨ サイカ動きゃせぬ

13 恋(来い)とヤレいう字を ハー「来るな」と書いて

  筆の誤りヤヨ サイカ手の如才(じょさい)

14 鯛(たい)のヤレ浜焼き ハー小ぼらの刺身

  親のかんどうもヤヨ サイカ無理はない
 

     その昔、石崎(七尾市)の猟師たちが、漁を終えて帰る途中、疲労を癒し、睡魔を防ぐため、舟を漕ぎながら唄ったのだという。

     七尾市石崎を中心に能登内浦の漁村で小舟の魯櫂唄として歌われたもので、故中西孫左衛門(昭和33年没)よって歌い継がれた。孫左衛門の話によると、天正14年城主前田利家郷巡村の祈り、魯櫂を操りながら、「舟漕ぎ唄」を歌い、帰村してくる様子を見て大いに感じ入られたと言う話が残っているという。

七尾市では、「舟漕ぎ唄」は沢山残っており、特に「正調能登舟漕ぎ唄」と「能登舟漕ぎ唄」が有名でどちらも同じ種類の唄である。この唄の母胎は、能登一円に伝承されている盆踊り唄の「青田もどき」といわれ、「青田もどき」は、三味線唄で「舟漕ぎ唄」は尺八唄となり、伴奏楽器は違っても曲の旋律は同じである。(歌詞解説:加賀山昭編「全楽譜・北陸民謡集」から引用)